『ピアノは背中で弾くのだろうか?』
スタジオに通われているピアニストの女性Hさん(80代)。
これまで運動経験が少なく、筋肉は決して強くないのに、
背中の筋肉はとてもうまく動かせることに驚いた。
背中のトレーニングは、目で見えないせいもあって
特に難しい部位なのに、これまでトレーニングを見てきた人の中で一番と
言ってもいいほどスムーズな動き。
音楽に疎い素人の私の考えでは、てっきりピアノは体の前面での動作だから、
胸や腕の筋肉を使うと思っていたけれど見事に違っていた。
その時に、おそらくピアノは背中で弾くのだと感じた。
昨夜は、そのHさんのピアノリサイタルがあった。
80を超えているとは思えない力強い演奏。
それはきっと背中がうまく使えているからだろう。
でも、筋肉よりも“魂の演奏”という感覚だった。
今も常に理想を追い求めている毎日何時間も演奏している姿、
寝ていてもピアノのことが気になり目が覚めるほど苦悩している影の姿、
一人の“芸術家”として尊敬すると同時に、
まだHさんの半分も生きていないのにブーブー言っている藤本はもっと努力せねばと思った夜でした。